マイコン豆知識では,マイコンを使ってみたいという初心者,技術者向けにマイコンがなぜ使われるか?などの基礎から,I/OやCPUなどのマイコンの構成要素をわかりやすく解説しています。さらにそれ以外の周辺回路についても解説していきます。


マイコンとは

マイコンとは

ヨースケ先生 「マイコンとは、最近のほとんどの炊飯器や冷蔵庫、洗濯機などなどの電気機器に
組み込まれた、その電気機器を制御するための電子部品です。簡単に言えば電気機器を制御する
ための小さなコンピュータです。
マイクロコントローラやMCU(Micro Controller Unit)、マイクロコンピュータとも呼ばれています。

マイコンが入った炊飯器(マイコン炊飯器)は、ボタンを押すとご飯を炊き始めますよね。
実は、「ボタンを押すという入力を受けて、ご飯を炊き始めるという出力をする」という動作をしているのがマイコンなんです。ではマイコンはどんなところで使われているでしょうか?

マイコンの用途は?

ヨースケ先生「マイコンは、最近のほとんどの電子機器に組み込まれています。一例をあげると
冷蔵庫や洗濯機、炊飯器、電子レンジ、掃除機などの家庭用電気機械器具、いわゆる家電を
制御するために使われています。

他にも、ロボットやロガーなどの産業機器、体温計や時計、温水便座にも使われています。このように
私たちの身の回りのほとんどの電子機器を制御するために使われており、今や必要不可欠といっても
過言ではないでしょうね。」

マイコンが作られた歴史は

ヨースケ先生「マイコンは電気機器の小型化と設計時間の短縮化を求める末に誕生しました。
1960年代まで、電気機器の制御回路は一個一個のトランジスタ素子で作られていました。
トランジスタについて簡単に説明すると、トランジスタは半導体の一種で、主にスイッチとして
用いられます。

また、トランジスタを使うことで、増幅回路や論理回路、演算回路などができるので制御回路を
作り出すことができました。制御回路を使うことにより、ボタンを押せば電気機器を制御で
きるような仕組みも作れました。しかし、回路が大きいといった問題も抱えていました。」

ICの登場

ヨースケ先生「1960年代後半、そのトランジスタを集積化したICが登場しました。このICを用いることで、
制御回路の小型化も期待されつつありました。一方、このころには、すでに多くの電気機器が普及し始めていました。
それら電気機器に用いられる制御回路やICはそれぞれの電気機器に合わせて設計されていました。
しかし、制御回路やICの開発・設計にはすごく時間とお金がかかるという問題がありました。」

マイコンの誕生

ヨースケ先生「そこで、1970年代にソフトウェアによって動作変更できるマイコンが誕生しました。
普及するのにはそれなりに時間がかかりましたが、マイコンはソフトウェアで動作変更できるという
すばらしい特長を持っていました。そのためICの作り直す部分は最小限になり、制御回路やICの
開発・設計にかかる時間は短縮化されました。このようにして誕生したマイコンにより、私たちの
身の回りにある様々な電気機器が制御され、今の私たちの生活を豊かにしています。」

マイコンを使うメリットは

ヨースケ先生「マイコンを使うメリットは、小型化と多機能化が両立でき、さらにさまざまな用途に
対応できることです。」

・小型化
ヨースケ先生「マイコンは、多数の抵抗やコンデンサ、トランジスタなどの電子部品を超小型にして
集積化したLSI(Large-Scale Integrated circuit)です。以前は多数の電子部品を用いて機器が
作られていたため、電子回路部分が巨大化していました。マイコンを用いることで、それら
電子回路部分を集積化できるため、機器の小型化につながりました。」

・多機能化
ヨースケ先生「部品の集積化により、さらに多くの部品を詰め込むことができます。以前は、機能の
追加は機器を巨大化させていました。マイコンを用いることで、機器に多くの機能を詰め込むことが
できるようになり、多機能化や高性能化にもつながりました。」

・さまざまな用途に柔軟に対応
ヨースケ先生「またマイコンはソフトウェアによって動作を変更できる特長があります。以前は、
動作変更のためにはLSIを作り直す必要があり、多く時間が必要でした。マイコンを用いることで
柔軟に処理を変更できるため、制御回路やICの設計・開発にかかる時間を短期化することができ、
色々な用途に対応できるようになりました。
マイコンが作られた歴史でも触れましたが、小型化と様々な用途に対応できるから、現在のいろいろな
電気機器に使われているんですね。」

冷蔵庫を例にしたマイコンの働き

ヨースケ先生「例として冷蔵庫を見てみましょう。
冷蔵庫の特徴を3つあげるとすると、下記のようになるでしょうか。
①冷蔵庫内の温度を一定に保つ
②冷蔵庫を開くと冷蔵庫内ライトを点灯
③冷蔵庫を60秒間開けっ放しにするとブザーが鳴る
マイコンは、この3つを実現するための司令塔として働きます。
①のためには、冷蔵庫内の温度を測定し温度が高ければコンプレッサーを動作させ、冷蔵庫内の温度を冷やす必要があります。
冷蔵庫内の温度がある温度まで下がったらコンプレッサーを停止させる必要があります。
②は扉の開閉でON-OFFするスイッチから扉を開いたことを検出してライトをつける必要があります。
また③は、冷蔵庫が開かれた時間を測定し、60秒後にブザーを鳴らす必要があります。
これら冷蔵庫の温度管理やライトの点灯、ブザーを鳴らすために常に人が張り付いているわけにはいけませんよね。そこでこれら冷蔵庫の温度管理などをしているのがマイコンです。
このようにマイコンは、私たちの身の回りで電子機器の司令塔として働いています。」

マイコンの構成

ヨースケ先生「ではマイコンはどんな構成をしているでしょうか?
マイコンは、電気機器の押しボタンなど外部からの信号を受け取る入力部・情報を処理する処理部・
ヒーターやモーターなど外部に信号を出力する出力部から構成されます。マイコンの動作は、たとえば
図のように、押しボタンやセンサ入力を受けて、内部で処理をし、ヒーターの制御信号やモーターの
制御信号を出力します。

そして、処理自体をソフトウェアによって柔軟に変更できるという特徴も持っています。
ここで、ソフトウェアとはプログラムのことです。これは追々説明しますね。」

マイコンについてまとめ

ヨースケ先生「さてマイコンについてまとめると以下のようになります。
・マイコンは,最近のほとんどの冷蔵庫や炊飯器などの電気機器に組み込まれている電子部品。
・マイコンの働きは,ボタンやセンサなどの入力を受けてヒーターやモーターなどを制御すること。
・マイコンの導入により,電気機器の小型化,多機能化が可能
・マイコンの動作は,ソフトウェアによって変更可能」

ヨースケ先生「さて次回は、マイコンの中身についてさらに詳しく見ていきましょう。」

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